レンタルDVDで映画「雨あがる」を観ました。
寺尾聡演じる主人公の侍・三沢伊兵衛は剣の達人だがお人好し過ぎて人を押しのけてのし上がることができず侍として出世しません。そして常に謙虚で腰が低い人物です。
僕はこの映画を観たとき高校のときの担任教師が言ったことを思い出しました。
「強そうに見えて強い人は二流で、弱そうに見えて強い人が一流です」
もしあの先生が言ったことが本当なら三沢伊兵衛は一流なのです。
三沢伊兵衛はその剣の実力を買われて城に招かれ殿様の前で御前試合をします。
そして二人の侍と対戦するのですが、二人ともまったく相手になりません。
そこで殿様が自ら槍を持って三沢伊兵衛と対戦するのですが、二人が槍と刀を合わせたとき三沢伊兵衛が刀で殿様を押して行って垣根の向こうの池に落としてしまいます。
池から出て来た殿様を三沢伊兵衛は「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」と気遣うのですが、これを屈辱に感じた殿様は激怒します。
つまり優しさが相手を傷つけてしまったのです。
要するにもし三沢伊兵衛が本当に殿様のことを慮って、あえて黙って見ているといういい意味での冷たさのようなものも持っていれば三沢伊兵衛は超一流だったということでしょうね。
でも三沢伊兵衛は馬鹿ではないのですからもっとその場の状況に応じて賢く振る舞えたのではないか?
つまりその部分が映画での人物の描き方としてちょっと不自然な感じがしないでもないです。
でも全体的には心が洗われるようなとても良質な映画でした。
そして三沢伊兵衛はかつて貧しい人たちを救うために賭け試合をしたことがあり、それを殿様に咎められるのですが、宮崎美子演じる奥方の「何をしたかではなく何のためにしたのかということが大切なのです」という名言でこの映画が締め括られます。